モリノスノザジ

 エッセイを書いています

2019-01-01から1年間の記事一覧

斜めの部屋

明るいトイレはにがてだ。…いや、にがてではないな。きらい、でもない。もったいない、でもない。もちろん許せないなんてこともない。どうしてだかわからないけれど、トイレの明かりは点けない。幼いころからそんな習慣で、朝や夕方のうす暗いトイレも平気だ…

春に試されている

クロッカスも桜も咲かないうちに会社にだけは春がきて、新年度とかいうやつ。人事異動に飲み会に、残務整理、引継ぎ、年度末締め。そういう「いつもと違うこと」に圧迫されている。そういった環境の変化が、どうやら今年は夜眠れない方向に作用しているらし…

おしゃれも戦略から

おととい、約一年ぶりにコンタクトレンズを装着した。うんざりである。ひさしぶりにコンタクトを着けるそのたびに、眼鏡越しにぼんやりと見ていた自分の顔とはっきりとした視界にとらえる自分の顔とのギャップに息が止まりそうになる。唇の縁、粘膜から皮膚…

モテは財産

書棚に伸ばした手と手がふれあって、アラ、ドキ。お互いに顔を赤らめながら本を譲り合ったりして、どういうわけだか場所は喫茶店に移りその本の著者の話に花を咲かせている。帰り際にはしっかり連絡先を交換したりして、なんだか何かがはじまりそうな予感―――…

和服はチャンス

ごみ袋みたいになで肩のシルエットをしたステンカラーコートを買った。そんなのがほしかったのだ。そのステンカラーコートが手触りまでもつるつるとごみ袋風であったので、すこしためらったけれど、15分ほど悩んで結局買った。家で袖を通してみると思った通…

やりたいことはなんでもやる部

『ボヘミアン・ラプソディ』を観たあとの気分は、なんだか焦りだった。上澄みなのだと思う。たった45歳で亡くなったといってもそれは120分の映画に詰め込むには長すぎる人生で、だから映画は彼が生きてきた人生の一部でしかないし、商品としてデザインされた…

お風呂にする?お風呂にする?お風呂にする?

大家族の入浴は大変だ。一人が入浴するのに30分かかると仮定して、7人全員がお風呂に入るためには3時間半かかる。途中の人は、最後までお湯が冷めたり減ったりしないよう気をつけなければならないし、長風呂なんてしていたら怒られてしまう。脱衣も迅速に…

妖精ミズクラシ

妖精ミズクラシは民家の天井に棲み、夜になると子どものような足音を立てて走り回る。このとき、水気のない天井であるにもかかわらず、ちゃぷちゃぷ・じゃぶじゃぶといった水音が聞こえることから「ミズクラシ」と呼ばれている。水音とともにちいさなはしゃ…

座右の銘は、きみにきめた。

それなりに、ばたばたした一週間だった。仕事の分量とか残業時間数といったような問題とは別に、仕事にさしせまった期限があるという事実に精神的に追い詰められていた感じがする。この一週間を乗り切れたのはあきらかに周囲のサポートがあったからで、さり…

「芸能人だと誰に似てるって言われる?」

スマホで顔を撮影すると、似ている芸能人が判定されるアプリ(そっくりさん)をダウンロードしてあそんでいた。あそぶもなにも、一回判定したらそれで終わりでしょ?と思いきや、俳優やアイドル、アナウンサー、Youtuberなど判定ジャンルが複数設けられてい…

「ふつう」について、Yahoo!知恵袋がおしえてくれたこと

ときどき明日のことやいまここにはないなんだかよくわからないなにかのことが不安でさみしくて、なにもしたくなくて、ひどくそわそわしているときがあって、そういうときは本を読んでもちっとも頭に入ってこないし、眠ることすらできなくて、手癖のようにス…

本棚のコカイン

このごろ話題になっているコカインというやつを、本棚から取り出して私も味わってみる。船山信次『〈麻薬〉のすべて』は新書という手軽な形態でありながら、麻薬全般に関する基礎知識や主な薬物の歴史、作用、社会での受け止め方など基本的な事項を網羅して…

飲み会をがんばらない

若いころは、飲み会では面白いことを言えなくちゃって思っていたし、お酒を飲んで羽目を外せるのはいいことだと思っていた。酔いの力で破壊的に場を盛り上げながら、他人に迷惑をかけないようにふるまえる人にうっすらあこがれていた。 飲み会という場におい…

プラスチックのイヤリング

エレベーターに乗り合わせたたくさんの客たちのなかに彼女はいた。学校指定と思しき濃いグレーのピーコートに黒っぽいジーンズ、黒ゴムで束ねたハーフアップ、すこし浅黒くて化粧っ気のない肌。黒いインナーのハイネックはへろへろに伸びていて、首元にちい…

顔が「ほんとう」?

眼鏡をはずして声だけのニュースを聞いていると、メイ首相の声がひどくガラガラで驚いた。低くしゃがれていて、まるで映画の悪役だ。イメージ命の政治家としてこの声は良いのだろうか、いやむしろ声は変えられないのだから、こんな悪役声でよくも政治家にな…

超・超・超音速飛行機

1月19日の朝刊に、アメリカのトランプ大統領が発表した「ミサイル防衛見直し」に関する記事があった。「ミサイル防衛見直し」はアメリカのミサイル防衛に関する中長期的な指針を示す戦略文書であり、ここでは宇宙空間を活用したミサイル防衛の強化が掲げられ…

Tシャツのヘンな英語をわらうな

水の流れに逆らって滝を上流へ上っていく鮭のように私は黒いかたまりのなかを上へ上へと歩いていて、何かと思ったらそれは通勤ラッシュのさなかの駅の階段なのだった。押し合いへし合う黒コートの隙間に鮮やかな色合いの紙袋がふっとあらわれて、そこに『BLO…

☆゚+.ステップアップ☆プリキュア(30%)+.☆ ゜

銭湯や旅館の大浴場で見かける中高年はたいてい腹が出ている。脚や腕はガリガリなのに腹だけ出ているところを見ると、太った結果からだにつくぜい肉とは違う類の肉のようだ。痩せていながら腹だけが飛び出ている人を見ていると、なんとなく地獄絵図に描かれ…

夢からの箴言

やたらはっきりした夢を見て、夢の内容がショックだった。休日なのに午前4時に目が覚めた。二度寝はした。 私の詠んだ歌が他人に批評されていて、その歌には「死ね」という言葉がふくまれていた。現実で私自身が詠んだ歌ではないので詳細は不明だが、ジョー…

Dear My Chair(and Honey!)

「私のどこが好きなの?」に対する最良の答えはなんなのかという問題の答えに、人類はまだ到達していない。容貌をほめるのか?努力を称えるか?性格のよさを評価するか?それともファッションセンスを?能力を?経済力を?それとも「ぜんぶ」と言う? 残念な…

フレッシュわんこPC

職場にあたらしいPCが入った。あたらしいPCは、以前のよりも画面が大きく、動作も速くてこころなしかディスプレイの発色もいい、あたらしいPCだ。 そして、あたらしいだけではなくてとてもフレッシュなPCだ。どういうわけだか彼は、メールを送信しようとする…

未来予想図は描かない

これを地図なき道を行く、なんて言えたらかっこいいのかもしれないけれど。 京都で学生時代の友人たちと会っていた。大学を卒業してから何度か、場所を変えて集まっている。一度目は石川、二度目は長野、三度目は兵庫、そして今回は京都。均質でどこまでもつ…

共感性のマーカー

文章を書くとき、無意識のうちにことばを使い分けていることがある。たとえばこの文章、過去形ではなくて現在形にしたのはなぜだろう?主語が「ことば」ではなく、「私」なのは?そして、その主語の「私」が実際には省略されていて、文章のなかに直接現れな…

きみはおっぱいが好きな人

数日前に「おっぱい星人」ということばを目にしてからなんとなく気になっている。そのことばが「おっぱいが大好きな人」という意味で使われていることは知っている(もしかして古い?)。けれど、なぜ「おっぱい星人」なのだ? 火星人やバルタン星人というこ…

それはまるで

ゆめのよう。 卵を二枚のロースハムで挟んで焼いて食べたらおいしかった。なにかのイベントの準備でオリジナルメニューを考えるためにその家に集まっていて、私は「そろそろレインコートを買わないとな」とかそんなことを考えたりしていた。何人かでレシピに…

グッドモーニング、モーニング

迷っている。860円でドーナツにソフトクリーム付きのセットを注文するか、それとトーストとサラダのモーニングセットを選ぶか。いつもなら迷いなくスタンダードなモーニングを選ぶところだけれど、ここは空港。旅先だ。はしゃいでもいい。それに、ドーナツと…

萌える二面性のリレー

裏のあるひとに惹かれる。といっても、恋人がイカの密漁者だとか、18歳で×5だとか、どこかあぶない国のスパイだったりすればいいなと思っているわけではない。そこまで行き過ぎていなくても、ちょっとした違和感のようなものであってもいい。二面性のある人…

「意識高い系」キライ系

春の訪れを前にして花がすこしずつひらきはじめるように、春以降の公演情報がすこしずつ聞こえてきた。チケットを買って4月以降の手帳に予定を書きいれると、なんだか気持ちだけ先に春になったような気持ちがする。 演劇はまだ片手で数えられるほどしか観た…

絵描きはジムへ行け

ほんとうはちっとも運動なんてしたくなくて、でも運動不足がよくないのでしぶしぶジムに通っている。どうしても気がすすまなかったら、今日はストレッチ用のマットレスでごろごろしてるだけでいい。そうやって自分をなだめてすかしていざジムに行ってみると…

バレンタインはだれのため?

ニコ生でバレンタイン粉砕デモの中継を見た。デモの主催者は「革新的非モテ同盟」という団体で、バレンタインに加えてクリスマスやホワイトデーにも同様のデモを行っている。彼らのデモは、「恋愛することが当然」という観念のもと消費を煽る恋愛イベントを…