モリノスノザジ

 エッセイを書いています

超・超・超音速飛行機

 1月19日の朝刊に、アメリカのトランプ大統領が発表した「ミサイル防衛見直し」に関する記事があった。「ミサイル防衛見直し」はアメリカのミサイル防衛に関する中長期的な指針を示す戦略文書であり、ここでは宇宙空間を活用したミサイル防衛の強化が掲げられている。

 私はこの記事を見てひとめで気に入ってしまい、写真も撮った。気になったのは、記事中の「極超音速兵器」という言葉だ。「極超音速兵器」って(笑)。小学生が友達と言い争いの最中に口走ったみたいな、半ばやけくそ的な空気を感じさせるネーミング。「超」の上に「極」が付くんかい(笑)超スーパーハイパーミラクル速いんかい(笑)とひとりやや受けしていたのだけれど、調べてみたら(もちろん)ごくごくまじめな分類名称らしい。極超音速、と言うからには音速を「超え」たうえでも「極めて」早いスピードを指す。分類上はこの極超音速がもっとも速く、そのあとに超音速、遷音速、亜音速と続く。

 

 しかし、「極めて」とはまさに程度が「極まって」いるのである。極超音速機より速い速度で飛行する航空機がつくられたとしたら、いったいどんな名前で呼読んだらいいのだろう?「超」や「極」のように程度を表す副詞はほかにもあるけれど、「かなり」とか「もっと」とか「大いに」みたい副詞は漢熟語にはくっつきにくそうだ。可能性があるとしたら「最」とかだろうか。若干「極」と被っているような気がするけれどやむをえまい。

 これからの未来に航空機業界で繰り広げられるであろう速度をめぐる開発争いを考えると、遠い未来には航空機が光速に限りなく近づくときが来るかもしれない。しかし、音速と光速のあいだにははるかな差がある。これから始まる航空機の発展に向けて、極超音速と光速との間を埋める新しい表現を考えていくことは重要な課題である。

 

 けれども、「極」を超えるとなるとどうにもやっぱり難しい。なんてったって、「極めて」いるのである。そうだなあ…。モー娘。の『恋愛レボリューション21』風に「超」を重ねてみるというのはどうだろう?超音速航空機より速い超超音速機。超超音速機より速い超超超音速機。極を重ねてもいい。極極超超超音速航空機。英語でハイパー・ハイパー・スーパー・スーパー・スーパー・ソニックスピードって言うと、さらにあほっぽくてすばらしい。

 それから、頭にこれ以上副詞が付けられないのなら後ろに付けてみる。「極超音速機~極み~」とか「極超音速機Lv.32」みたいな。あるいは、音速と光速との間に新しい概念を設ける。瞬速や神速なんてどうだろう?

 まとめてみると、たとえば「極超超超神速機~9段~」みたいな飛行機が将来あらわれるはずだ。高速飛行機業界にお勤めの皆さん、この提案はいかがでしょう?