モリノスノザジ

 エッセイを書いています

2020-01-01から1年間の記事一覧

あなたAWARD2020

2020年も残り1時間を切る頃合いとなってまいりました。12月16日から参加を募ってきた「#わたしAWARDs 2020」、いよいよ結果発表のお時間です。司会はわたくし、森淳がお送りします。 さて、ゲストには本日森さんにお越しいただいております。森さん、森さん…

今年の一歩

自分自身のことはそこまで好きなわけでもなく、かと言って大嫌いということもない。なんだかんだで30年以上一緒に過ごしてきた自分のことだから、情が沸いてしまうのだ。いまさら見捨てるというわけにもいかない。もっとも見捨ててしまえば私は終わってしま…

次のご注文は?

「本日中にお召し上がりください」を、あの人たちはどういうつもりで口にするのだろうか?夜の8時に山盛りのパンを買う人。箱一杯のケーキを買う人。世の中にはきっとその「本日中にお召し上がりください」を忠実に守る人や、忠実に守ることができる幸せな…

ちょっといい顔になりました

ほめられるのは、簡単じゃない。単に私がほめられ慣れていないという、それだけのことなのかもしれないけれど、人にほめられるのは気恥ずかしくてくすぐったいことだ。 何についてほめられるかというのもいうのもわりと重要で、たとえば、自分ではたいしたこ…

#わたしAWARDs 2020(~12/30募集中)

非公式のお題企画「ゲリラブ」第三期として、#わたしAWARDs 2020という企画を開催します。期間は、12月30日(水)までの14日間です。 今回の指令 〇お 題 :受賞してください 〇 投稿日:令和2年12月16日~令和2年12月30日の期間 ・ あなたの2020年を振り返…

きょうも大丈夫

通勤電車にはやや遅い時間、のはずだけど、空いているというわけでもない車内だった。ロングシートにはまばらな空席、それに、つり革につかまって立っているひともちらほら。これだけ座席が空いているのに立っているということは、つまり、立ちたいというこ…

ご褒美ってなんだ?

なんだろう、この。季節の変わり目のせいなのか。ここ半月ほどあまり元気がない。叩き込まれた裏拳にずっと胸を圧迫されているような重たさがおでこから眉間のあたりにかけてぶ厚く堆積していて、ほんのちょっとした衝撃で水がこぼれてしまうコップみたいに…

童貞をきみに捧ぐ

個室というものは根本的にプライバシーを保つという目的で設けられるものであって、だから、個室のなかでどんなことが行われているか、どんなふうに行われているかはわからない。個室ビデオも個室カラオケも、電車のコンパートメントも、一人暮らしのワンル…

ふたたびのゲリラ

少し間があいてしまいましたが、お題企画「ゲリラブ」二回目は11月22日(日)の決行でした。 今回のお題は「書き出し固定:好きか嫌いかで言うと」。「好きか嫌いか」という二択のお題を出しておきながら、好きとも嫌いともいえないような複雑な感情を引き出…

苦くて苦い

好きか嫌いかで言うと、嫌い。 ――だったはずだ。いや、厳密に嫌いだった…なんて言うと、最悪な第一印象から始まるラブストーリーみたいだけれど、でもこれは違う。 なにしろあいつと言えば真っ黒でドブみたいな見た目をしているし、舐めれば苦い。むしろ苦い…

財布の中まで魂百まで

エリエールのキッチンペーパーが4ロールで税込177円。財布からお金を出しながら、キッチンペーパーを177円で買えることのありがたみを身体全体で感じている。 何日か前に唐揚げを揚げて、そういえばキッチンペーパーを切らしていると気がついた。仕方なく、…

鍋の沼にはご用心

スーパーマーケットに行くときには注意しなければならない。たいていのスーパーマーケットは入り口を入ってすぐ野菜を陳列していて、つまり、お店に入るやいなや白菜ドン!ニンジンしいたけドン!!えのきがドン!ついでにサイドの保冷庫にお豆腐と揚げがドン…

超える

お酒も飲んでないのに酩酊したような高揚感につつまれて人通りのない道を行く。そういえば、ここ半年ほどでずいぶん効率よく生活できるようになった。寄り道もせずに帰宅して、食事をつくってシャワーを浴びるその手順がおどろくほど洗練され、食後に「どう…

愛のことを言わせてほしい

電車のなかで知らない人とふと目があって、それから、もしかしたらこの人との間に始まる恋があったかもしれないと想像する。いい相手に出会えないだのなんだのとたくさんの人が言うけれど、多分そうでもない。今の今まで他人だった相手であっても、何かのき…

切り上げ三十は背伸びがしたい

「底のほうに粉が溜まっていると思いますから、最後まで飲み干さないほうがいいですよ」と言う店員からホットコーヒーを受け取って、確保しておいた席に戻る。カフェではいつもすみっこだ。出されたものを「最後まで飲まないほうがいいですよ」だなんてめず…

北国は隠してる

なにも予定がない、誰とも約束をしていない休日はとてもひさしぶりで、こんな日はむやみに掃除をしたくなる。なにもしない休日というのもそれはそれでいいのだけれど、そういう日は終わってから後悔しがちだ。なにもする気がしないならしないで、むりやりで…

第二期ゲリラブ隊志願者募集(~11/11)

前回の活動(https://s-f.hatenablog.com/entry/2020/09/22/175321)に引き続き、お題企画となります。お題内容及び投稿日時は事前公表せず、参加希望者の方にのみ事前にお知らせしますので、参加を希望される方は森へご連絡ください。 ゲリラブの楽しみかた…

季節が足りなかったので

地元LOVEとかそういうわけではないんだけれど、というか、どちらかと言うと地元を捨ててこんなところまで来てしまった立場ではあるのだけれど、一人暮らしをはじめてから10年以上もの間、冬は必ずインスタント味噌煮込みうどんを常備している。野菜もたっぷ…

サイレント好きブロに参加しました

「ですね。note」の企画、サイレント好きブロに参加させていただきました。 www.desunenote.com 普段はラジオというかたちでゲストさんとやりとりされていますが、今回は文字のみということで、複数回のメールのやりとりを経て形にしていただきました。 メー…

そして謎は更新される

ドイツの哲学者イマヌエル・カントは、その生活の規則正しさがよく知られている。カントは毎日、決まった道筋を決まった時間に散歩した。そのルーティーンには寸分たりとも狂いがなく、カントの散歩道沿いにある家では、家の外を歩くカントの姿を見て時計の…

くせコレクション

微弱な揺れを検知して、すばやく周囲に目を走らせる。書架、揺れてない。デスクの上の吊り看板、揺れてない。ペン立てに差してある定規、これも…揺れてない。おかしいな。30年以内に大地震に見舞われる可能性が50%と言われる地域に生まれて、地震には敏感に…

ドレスコードは「よっぱらい」

人生も終盤にさしかかって、自分に残された時間を急に意識するようになったーーわけではないと思うけど、なにかをすることはそれ以外のすべてのことをしない決断をすることだということを肌に刻むように、このところは生きている。私は同時にひとりしか存在…

12歳はつきまとう

学校で書かされた「将来の夢」を、大人になってから実現したひとってどれくらいいるのだろう。多分、高校の卒業文集に書かれた夢よりは中学校の卒業文集に書かれた夢のほうが、中学校の卒業文集に書かれた夢よりは小学校の卒業文集に書かれた夢のほうがのち…

後悔ロード

それでもなんとか上手に生きていきたいという気持ちで、あほはあほなりに計算をしてみたりする。このプリンを食べる場合と食べない場合で、どれくらい幸福度に差ができるか。嫌いなあの人と出くわさないためには、書類を持っていく時間を何時ころにすればよ…

ホットドックと社会人ときらきら

たったいま店員が持ってきてくれたばかりのホットドックを片手に、私はしばし正視した。これはもしかしたら、いや、もしかしなくても、カウンターでホットドックを注文したあのときから、私は間違っていたのかもしれない。そう、後悔した。 約束の時間までの…

かかと落としとその先と

夜の間に降ったらしい雨はすっかり上がって、濡れた路面がきらきら輝いている。シャツに薄手のジャケットを羽織って玄関を出ると、なんだか昨日よりまた一段階季節が冬の方向に進んだような気がして軽く身震いした。これはもうちょっとしたら秋物のコートが…

あなたは内から?外から?

”それ”は、年末にさしかかるちょうどこの季節にやってきて、村を襲います。そうなると村人たちは、恐怖に怯え、震えることしかできません。”それ”は村をあたためる太陽を隠し、つめたい結晶をいくつも空から降らせて家や田畑、家畜をすっかり覆いつくします…

極まりし運動嫌いのためのメソッド

今週のお題が「運動不足」ということで、自粛により運動の機会を失ったはてなブロガーたちがゾンビのように集まり、また、そんななかでも身体を動かすことをやめなかったブロガーたちが「手軽に始められる運動」とやらを伝授するべくやたらと甘ったるい声を…

ここは金星人のすみか

宇宙人と言えば、うすい灰色の人型で、頬はこけて顎がやたらととんがっていて、白目のない大きな瞳、小さな口。触れれば硬くて乾燥していそうなあいつ。それから、帽子のようなぐんにょりした頭(?)から何本も触手を生やし、さわればやわらかくてしっとり…

もう子どものままじゃいられないのよバウムクーヘン

5年前に別れた恋人から連絡がきたのは、三日前のことだった。なんでも用事があって近くまでくるんだとかで、地元で有名な酒蔵の日本酒をおみやげに買ってあるだなんて言うので時間をさがして少しだけ会うことにしたのだ。 待ち合わせをしたのは、駅ビルのな…