モリノスノザジ

 エッセイを書いています

2022-01-01から1年間の記事一覧

ほんの記録(2月)

最近、ようやくまともになってきたよう感じる。ちょっと前までの季節の感じの、嫌な感じといったらなかった。世界がバランスを欠いていて、そのズレのなかを私は生きている。日に日に陽は高くなり、真昼の日差しはまるで春のようなのに、寒い。雪はあいかわ…

たまにあやまちの金曜日

ひとつ、その日は金曜日で、次の日はお休みであったこと。ふたつ、家の冷蔵庫はからっぽで、ろくに食べられるものがなかったこと。みっつ、その日はなんとなく、まともに料理をする気持ちが起きなかったこと。それに加えて、よっつ、なにかの気まぐれで、た…

ほんの記録(1月)

短い文章がいくつかまとまっているような本は、通勤中に読むのにうってつけだ。ひとつの文章を読み終えて、目的の駅までにまだ余裕があるようであればもうひとつ、あと一駅ならきりのいいところでやめにして…ということができるので、中途半端なところで読書…

たとえばこんな終わり方

プリンスと結ばれなかったディズニープリンセスを、見たことがない。一組の男女が出会って、恋に落ちる。もしもこれがおとぎ話だとしたら、彼らは道行く先で困難にぶつかりながらも、互いに愛を深め、やがて結ばれることだろう。 おとぎ話の世界で幸せな恋ば…

入籍の日ってうちじゃなぜか

「彼女、今入籍してるところなので」と言いかけて、いまにも口から外に出ていこうとする言葉の肩に手をかける。まだ出るな。今、「今入籍している」と言おうとしたのか? 同じ職場の後輩の女の子――偶然にも私と同じ「森」さんだ――は今日、休暇を取っている。…

ねこ、ねこを増やせ

なにも予定のない土曜日の昼はだいたい、寝ている。午前中に家事や買い物を済ませ、昼食を取ってからゲームで軽く身体を動かす。14時ころ、本を読もうとソファに横になって――もちろん、予定通りにソファで読書ができたことなんてない。 暖房の効いた明るい部…

新春ドン引きカレー

クリスマスに食べるシュトーレンにも、喫茶店のモーニング・サービスにもそれはある。端午の節句に飾るこいのぼり、ネクタイの模様、ごはんの前の「いただきます」にも。どんな慣習もたったひとりの思い付きからはじまる。こんなことしたらおもしろいかも。…

ほんの記録(12月)

そういえば、ちょうどこれくらいの時期だったかもしれない。雪の降る日。鞄に本を詰め込んで、大学のバス停にやってきたバスに飛び乗った。ついさっき、卒論を学務に提出したところだった。 駅のバスターミナルで降りて、長距離バスに乗り換える。はじめて行…

買い物占い2022

にがてにがて、お金のことを考えるのは苦手。節約や運用のことを考えるとからだがムズムズしてじっとしていられなくなる。まだ掃除をしたほうがマシだ。それでも人並みに将来に対する不安はあるものだから、結局のところ、上手にお金が使えない人間が生まれ…

明けまして、多すぎる

年末年始は、どうもしきたりが多すぎるような気がする。年末の大掃除に始まって、年越しそばに除夜の鐘。年が明ければ、初詣。正月飾りに鏡餅、門松、おせち。年賀状にお年玉。お雑煮、お屠蘇。元旦はお風呂に入らないだとか、掃除をしないだとか、行動に関…