モリノスノザジ

 エッセイを書いています

2019-08-01から1ヶ月間の記事一覧

森の書斎から

一人暮らしの部屋に書斎をつくった。いや、つくったというよりは、気がついたらそうなっていたというほうが正しい。ベッドの脇に、天板と脚だけのシンプルなサイドテーブル。LEDのスタンドライトを取り付けて、ノートとボールペンを置けば即席書斎のできあが…

あなたがタイプ

ビーズみたいな雨がばらばらと降る夏の夜だった。大学の裏山のその先がどことつながっているのかを唐突に知りたくなった私たちは、唐突に車に乗り込んで、深夜のドライブに出かけた。街灯もまばらな山道で、太陽もない夜の曇り空が、木と木の間に明るく透け…

6時30分起床、

日記をつけるようになってから7年くらいが経った。―――と言っても、7年間毎日続けているわけではない。三日坊主を7年間続けている…いや、三日間も続けばいいほうで、最近は一週間に一度しか書かないことだってざらだ。思い出したときに、思い出したように…

世界を救うねこエネルギー

私の実家には2匹のねこがいる。一匹はしろくて、一匹はちゃいろい。両方とも牝で、捨て猫が保護されたのを妹がもらってきた。家では父・母と妹、祖父母の5人が暮らしている。ねこたちはどちらもみためがいいねこなので、人間たちにかわいがられている。と…

誠実な頭皮です

世間はお盆休みだっていうのに、思ったよりも電車が空いていなくてへこむ。乗客はいつもの半分―――というほどでもない。1割減と言えば控えめすぎるけど、3割減は言い過ぎだ。まったく日本人というやつは、年に一度の墓参りもせずに毎日電車に乗って過ごして…

俺の文章

日本語の一人称代名詞は多様である。といっても、日常で使われている一人称はせいぜい数種類といったところだろう。「わし」とか「それがし」、「拙者」「わて」なんてのは一種の役割後と化していて、生身の人間がこれを使うことはたぶんほとんどない。「あ…

人生はすばらしいと言う

このあいだひとつ歳をとった。30歳である。もう30歳。幼いころの私も、社会人になったばかりの私も30歳はとおい大人だと想像していて、でも現に30歳になってみればそれはよくも悪くも単純に、これまでの人生のさきっぽなのだった。20歳の私から切り離された3…

『天気の子』の結末を私は知っていたはずだった

映画『天気の子』の感想です。このつづきには『天気の子』・『君の名は』・『秒速5センチメートル』の結末に関する感想が含まれます。ただし、作品のあらすじ紹介や解説は行いません。

ジェラシー多治見

暑さとは体温と気温との乖離の度合いのことなのではないかと、食堂の比較的辛いカレーを食べながら思う。あるいは、冬に新調して敷きっぱなしの毛足の長いラグに両足を投げ出して、缶ビールをすすりながら思う。平熱35度の人にとっての体温38度と、平熱37度…

あたらしい皮膚

私には髪がある。おそらくハゲ家系と白髪家系の掛け合わせと思われる私の頭皮がはたしてこれからどんな成長を遂げるのか、その変化から目が離せない。ここのところ女性を中心に白髪に積極的な価値を認めようとする動きがあるけれど、それがなくとも白髪はう…