モリノスノザジ

 エッセイを書いています

2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

濃厚接触のはじめかた

眼鏡を外したら美少女だった、というのは物語では定番の展開だ。実際のところ眼鏡のレンズは透明であって(事情があって色付きのレンズをはめている場合もあるだろうけど)、透明なレンズを通していつだって素顔が見える。だから、漫画に出てくるようなジャ…

もうXXなのにね。

今年はきっと日焼け止めが売れていないと思う。浮き輪も、スーツケースも、ビンゴのがらがらも。そういえば、いつも通る大型スーパーに今年水着コーナーはあっただろうか? 「もう8月なのにね」と何気なく言った瞬間、まぶしいくらいの既視感に襲われた。あ…

エロス紙一重

電車に乗るとときどき、とんでもないものに出くわすことがある。空いた休日のロングシートで堂々と絡み合っているカップル。肩にかけた荷物のせいで、胸元が無防備なおねえさん。気づいているのかいないのか、会話に夢中になるうちにミニスカートの中身が丸…

呪いと呪い

私には呪いがかかっている。カレーライスの玉ねぎを、とろとろになるまで炒めずにはいられない呪いだ。この呪いにかかると、カレーライスをつくるときに玉ねぎがとろとろになるまで炒めずにはいられなくなる。…まあ、それはそれでおいしいからいいんだけど。…

世界がうまれるところを見た

おそるおそるという感じだった。映画や演劇を観た日には日記を書くようにしていて、だから、私の日記は2月28日からずいぶん長い間新しい文字が書かれずにいた。新型コロナウイルスがだんだん危機感をもって受け止められるようになってきたころで、それでも予…

息をするのは大事でしょう?

右の手首と左の手首を重ねて高く上げ、上半身をゆっくりと左に倒す。もどって、右に。もどって、また左。Fit Boxingでエクササイズの前後に行う準備運動のひとつで、いつからか、この運動をしながらたくさんの息が胸に入ってくるのを感じるようになった。腕…

ブログという沈みゆく船に乗って

他人といっしょになっておもしろがるって、すごくいいなあと思うことがある。学校に通っていたころはそんなタイミングがいくつもあったのかもしれない。でも、なんだか逃してしまっていた。昨日見たアニメのこととか、流行りのドラマのこと。このあいだ発売…

第三の腕の男

坂井(仮名・28歳)の朝は、同棲中の彼女が手作りした弁当を持って玄関を出るところから始まる。近所の勤め先まで自転車で通う彼女と並んで通りを歩いて、駅近くの交差点で別れるのが日課だった。交差点でなかなか青にならない信号を待ちながら、去っていく…

花の矜持

紫陽花が好きだ。こんもりした緑の葉っぱに、白や水色の小さな花。意外と公園なんかにも雑に植えられていて、梅雨時期に花が咲いているのをみつけてはじめてそれと気がつくこともある。紫陽花をうつくしくしているのはなによりもあのガサツな感じの大ぶりな…