モリノスノザジ

 エッセイを書いています

2021-01-01から1年間の記事一覧

たねとたね

12/26分の再投稿です。文章が表示されていなかったようで、申し訳ありませんでした。(id:ymaria53) 、ご指摘ありがとうございました! :::::::::::::::::::::::::::::::::::: ヴィーナスの着衣のようなドレープ。思わず…

チーズたっぷりミラノ風ドリアのパ

12月24日の夕方、サイゼリヤ札幌すすきの交差点店。二人席。テーブルをはさんで向こう側の座席には、ブラウンのコートが丸まっている。まだ少しだけついていた外の雪は、サイゼリヤのあたたかさに緩んで、やがて微細な光の粒へと変わっていく。私はテーブル…

3年4カ月めの下書き

クローゼットを開けると収納ケースの上に箱があって、箱を開けると、ずっと昔に買ったiPhone4の付属イヤホンに、余ったカーテンフック、何かの家具を組み立てるのに使った小さなレンチや目の入ったダルマがあるというように、そういうふうにこの下書きは3…

入浴は戦いだ

入浴は戦いだ。 入浴前に、入浴剤を選ぶのは好きだ。家と職場とスーパーを行き来しているだけの生活で手に入る入浴剤はバブくらいだが、柚子か蜜柑かを選べるだけでもずっと楽しい。ばら売りの入浴剤がいくつもストックされていると、よりよい。暑い夏はクー…

ほんの記録(7・8・9月)

まぬけか。まぬけなのか、私は? 書棚を前に、頭を抱えている。頭痛の種はと言えば、本棚に並んだこの本の並びだ。以前この本棚を整理したのは、たしか三ヵ月前。つまり、たった今眺めているこの並びは、三ヵ月前に何らかの意図をもって並べた結果である。し…

真夏の夜の

全体がゆるくゆるく傾斜掛かったようなその街の朝のなかを、一台の車が走り出ていくのを見た。朝、私はコンクリートの高台の上を歩いていた。そこから一段低いところに道があり、車はその道を飛ぶように走っていく。車内にちらっとだけ、隣のクラスの担任の…

すごくふつう

毎日通う職場のビルがすごいので聞いてほしい。ビルは、すごい。まず、毎日あの形を保っている。おとといから昨日にかけては、久しぶりの、それなりに雨量の多い雨模様だった。それでもビルは、濡れてへたっていることもないし、湿気で膨張することもない。…

自転車の上が永遠と思えた日

ローマ字の綴り方を覚えたのは、たしか小学4年生のことだった。英語の授業――と思いきや、現在の学習指導要領では、国語の授業に習うことになっているらしい。そういえば、あの頃の小学4年生の時間割には英語がなかったような気もする。英語の時間に習った…

わいせつゲーム

このごろは、トップスもボトムスもオーバーサイズでゆったりと着こなすのが流行っているらしい。そういう服装を「だらしない」と感じる人もいるようだけれど、こういうトレンドは私にとってはうれしい。ゆったりした服が好きだ。Tシャツに余裕があると、気持…

考える・始める

日記はここしばらく更新が途絶えている。もともと、ここ数年はこまめに書いていたということでもない。記録に残しておきたいような特別な出来事が起こったとき。あとは観劇をしたときにその感想と、ついでにその日にあった出来事を書いておくくらいだった。…

予言

このところ食欲が爆発している。……と言っても、たくさん食べるというわけではない。自炊一辺倒だった暮らしを改めて、毎日あちこちの店を渡り歩いては外食を楽しんでいる……というわけでもない。砂糖は上白糖とグラニュー糖を料理によって使い分け、キッチン…

ほんの記録(6月)

私はいつも100%なので、ブログを書かないときはゲームしたり短歌を書いたり、仕事したりして過ごしている。前回の更新からずいぶん間があいてしまったけれど、私は大丈夫です。 毎年6月はたくさん本を買う月と決めていて、そういうわけで今年もたくさん買い…

100万円が、あらわれた!

6月21日、22日のAmazonプライムデー。それに、もうじきやってくるボーナスの支給日。さあ今回は何を買おうかななんて期待をふくらませていてもいいような時期なのに、いざ買うぞとなると肩透かしをくらったみたいに買いたいものがない。本は書店で買うことに…

5・7・5とすこしのことの

俳句の話を、と言われているのについつい短歌のことを話したくなってしまうのは歌詠みの悪い癖だけれど、私が今のように短歌をはじめるようになったきっかけを聞いてほしい。 私が教科書の外で出会ったはじめての短歌は新聞歌壇だった。どんな歌だったかはも…

かたちのかたち

それまで特になんでもなかったものが、あるときから急に気になりはじめて、とても無視できなくなってしまうことがある。言っておくが、恋ではない。マグカップのふちをなぞっていた指が、マグカップの欠けた部分に触れて、それからずっとそこをなぞってしま…

野球選手にならない人生

サントリーの「CAFE BASE」すっきり甘いアーモンドラテを飲んでいる。340ml入りのペットボトルにアイスコーヒーの原液が入っていて、牛乳で希釈すれば約10杯分の量。数カ月前にはじめてスーパーで見かけて購入したのだけれど、カフェで飲むような飲みものを…

ほんの記録(5月)

一人暮らしを始めてもう10年以上になる。15年未満、それ以上の詳細を数えるのは面倒だからやめておく。思えばこの間、恋人と同棲…することもなく、結婚。することもなく、引越しは3回くらいしたけれど、まあ10年以上15年未満の間に3回なのだから特別多いとい…

伊藤さん

ねこが信頼している飼い主にやるあれ、ゆっくりとまばたきをするやつがいいな。私はねこを飼っていないけれど、実家に帰ると二匹のねこは私のことをまだ覚えていて、ときどきあれをやってくれる。ゆっくりとしたねこのまばたきを見つめながら、おんなじよう…

もっと積極生活宣言

4:43am 雨の音で目が覚めて、ぼんやりした頭のままスマートフォンの画面をこすっている。だれかのツイートに「自粛生活」ということばをみつける。 緊急事態宣言が出されて、北海道も生活が変わった。土日には、食料品などを扱う一部のフロアを除いてデパー…

noteをはじめました

noteにて、記事の更新を開始しました。 3年前からこのブログで書いてきた古い記事のリライトとなりますが、元の記事より1ミリでも読み甲斐のあるものになるよう挑戦していきます。こちらもぜひ。 ◆ https://note.com/mori_s Twitterでは、ブログ・noteともに…

切り口はまだ、やけにあざやか

一人暮らしなのに食べ切れないほどのみかんを買って、たいていその何割かはだめにしてしまう。冬の空気で乾燥してしわしわになったみかんはこころなしか以前よりもやや縮んでいて、けれどもそんなふうに乾燥してもう食べられないと思われるみかんでも、半分…

大吉人間、あらわる

感染症対策、ということで元旦の参拝を遠慮して、せめて三が日が過ぎるまでとは見送って、仕事がはじまったらそれどころではなく、それからはすっかり忘れてしまっていたものだから、先月になってようやく「初詣」をした。とは言え「初詣」にははっきりとし…

ほんの記録(3・4月)

何年も前のちょうど、今ごろ。大学に入学したばかり、一人暮らしを始めたばかりの私の家に、友人がやってきた。大学に入ってはじめてできた友人で、部屋に友人が遊びに来るのもはじめてだった。 ただひとつ残念だったのは、先輩がひとりくっついてきたことだ…

涙、よくわからない

いつもどおりのゆるい朝の挨拶を交わして、デスクに座った先輩が「Windowsのアップデート、した?」と聞いてきた。なんでも現在使用しているバージョンは来月でサポート切れになるだとかで、システム担当者からアップデートを指示されていたのだ。「10分くら…

バカの薬箱

幼いころは薬屋が定期的に家にやってきた。薬屋がやってくると母は、押し入れから透明なオレンジ色の引き出しがはいった薬箱を取り出してきて、そこに新しい薬を詰めてもらうのだった。 その薬箱を、母に内緒で何度か開けたことがある。カプセル薬は光にかざ…

いつかブログを閉じるとき

「いつかはこのブログが必要でなくなるときがくる」。そう書いたひとがいて、ああそうだなとおもった。その人がそう考えるに至った具体的な経緯や、むしろそういったことが書かれてあったかどうかすらも覚えていないのだけれど、その一言だけは覚えている。…

ほんの記録(1・2月)

図書カードNEXTのホームページに、作家に3万円分の図書カードを渡して本を買ってもらうという企画がある(https://www.toshocard.com/booktopics/select/backnumber.html)。毎回、3万円分の図書カードを持たされた作家が本を選び、その本を選んだ理由を語…

戦線にまどろみ

長い長い戦争がはじまって、もう20年近く経つ。それは降ってわいたように前触れもなくやってきた。こちらに攻撃されるようないわれはない。…たぶん、そのはずだ。容赦ない猛襲に対して、私は涙や鼻水を流して防衛するしかなく、敵に対して積極的に危害を加え…

「結婚しました」

じつは、結婚をしました。去年の12月くらいに。もっとはやくお伝えしたかったのですが、年明けは仕事がばたばたしていて、それどころではなくて。実際、ふたりで暮らすようになっても「新婚」という感じでもなくて、なんだか実感がありません。結婚したのは…

隔たったところから

変化というものは本来、いいものでも悪いものでもない。変化にはいいものも悪いものもあるし、ある変化がいいものであると同時に悪いものでもあるということもある。それなのに。「この1年の変化」と言われると、ほとんど反射的に「悪い変化」のほうが頭には…