モリノスノザジ

 エッセイを書いています

2018-08-01から1ヶ月間の記事一覧

「平成の夏」が思い出になるとき

ここのところ、「平成最後の8月」だとか、「天皇陛下が〇〇を訪問するのは最後」なんていう報道を耳にすることがあって、ああそういえば最後なんだな、っておもう。あと9カ月で元号が変わるというのにちっとも実感がわかなくて、「平成最後の6月」も、「…

ステルスご当地のススメ

父は、旅先でスーパーに入りたがる。普段通っているスーパーとは品ぞろえが違うのが面白いらしい。 たしかに、最近はスーパーにもお土産品が置いてあったり、地元の酒蔵の商品をあつめた特設コーナーがあったりする。簡易包装で比較的安価であったりもして、…

豆苗の罠

豆苗は食べておいしく、育ててたのしい野菜です。 毎朝駅のホームで顔を合わせはするけれど、一度も挨拶をしたことがない人。豆苗に関してはそんな認識だった。スーパーでいつも見かけはするけれど、いっしょに置かれているスプラウト系の野菜との違いもわか…

ハラスメント・スイッチ

夏は海岸に打ち寄せた波が引いていくように8月を通り過ぎていった。夏ではなくまだ秋でもないこの季節は半袖でもぐりこむ毛布がすばらしく、いつもなら一番好きな季節なのだけれど、私はここのところ疲れて落ち込んでいる。仕事に行くたびに嫌な気分になっ…

貝がらをひろって歩く

昨日、小さな劇団の公演を見に行った。 演劇を見るのは大人になってから初めてだ。いつも省エネ運転で生活している私にとって役者さんのパワーは圧倒的で、すこしくらくらするような気持ちで地下鉄に乗りながら、そのパワーの一部を分けてもらったようにも感…

読書感想文後遺症

義務教育を終えてから10年以上の時が経ったいまでも、私は読書感想文後遺症に苦しんでいる。 私たちは、読書感想文をはじめとした、日誌や観察記録、学級新聞といった教育文章を繰り返し書かされることによって、ある種の文章の型を仕込まれてきた。それはと…

鍵をかけたかわからない

私の実家は田舎だ。三方を水田に囲まれていて、残る一辺は細い田舎道に面している。その田舎道から家に入るには個人経営の自動車修理店の工場を通り抜けなければならないから、わが家は四方を守られた鉄壁の地と言えるかもしれない。 そんなわけでわが家は施…