モリノスノザジ

 エッセイを書いています

お風呂にする?お風呂にする?お風呂にする?

 大家族の入浴は大変だ。一人が入浴するのに30分かかると仮定して、7人全員がお風呂に入るためには3時間半かかる。途中の人は、最後までお湯が冷めたり減ったりしないよう気をつけなければならないし、長風呂なんてしていたら怒られてしまう。脱衣も迅速に。下着姿のまま、バスマットのうえでゆっくり肌の手入れをするなんてもってのほかだ。こんな大家族の前では昭和の家庭にありがちな「父親が一番風呂」なんてルールは機能しない。とにかく入れる人が・入れるうちに入浴しなければならない。

 そんなわけで、7人家族の「子ども」だった私が入浴するのは、大人たちが帰宅する前、夕方の時間帯だった。学校から帰って部屋にカバンを置いたらすぐに「いまのうちにお風呂入ってよー」という母の声。お風呂場の窓から差し込む光が湯気でぼやける。タイミングの問題上子ども向けTV番組が見られないのが残念だったけれど、夜にならないうちからお風呂に入ることはそんなに嫌いじゃなかった。

 子どもの頃に身に着いた習慣は一生残るってほんとうなんだろうなあ。今でも帰宅して最初にするのは入浴だ。お風呂はご飯の前がいいとか後がいいとか。所説あるけれど、そんな問題は別にしてとにかくお風呂が最初なのだ。お風呂にする?お風呂にする?お風呂にする?なのだ。それ以外の選択肢を選ぶ日は基本的にない。

 休日はまだ明るい時間から入浴する。だいたい17時くらいなのだけれど、外出の予定がなければもっと早くてもいい。なんだか最近どんどん時間が入っているような気がする。一番好きなのは、ゆっくりと湯舟につかったあと、パジャマで3時のお風呂を食べることだ。なんとなく「お風呂」というイベントは食事や就寝と同じくらいに生活の区切れになるような気がしていて、だらだらとした休日の午後の切れ目を少しずらしてやるのも悪くな…

あ。

お風呂が沸いたみたいだ。