モリノスノザジ

 エッセイを書いています

北国は隠してる

 なにも予定がない、誰とも約束をしていない休日はとてもひさしぶりで、こんな日はむやみに掃除をしたくなる。なにもしない休日というのもそれはそれでいいのだけれど、そういう日は終わってから後悔しがちだ。なにもする気がしないならしないで、むりやりでも身体を動かして部屋をきれいにするほうがいい。それに案外、掃除ってやり始めたらその気になる。初めからその気があるならなおさら掃除をするべきだ。

 

 カッターで切り込みを入れたスポンジで窓のサッシに溜まった埃をぬぐって、雑巾で拭く。窓も拭く。1階じゃないので、外側から窓を拭けないのが残念だ。窓を拭いていると、隣の建物の窓ガラスに自分の姿が映っているのが見える。それでも、お隣さんと顔を合わせる心配はない。お隣さんは早々に冬支度を終えたみたいで、窓の全面が銀色の保温シートで覆われている。去年は段ボールが一面に敷き詰めてあったから、ちょっと進化したみたいだ。それにしても、あの状態だとろくに換気もできないような気がするのだけれど、いいのだろうか。

 

 乾いた雑巾で再び窓を拭いてから、こちらも冬支度にとりかかる。二重窓の内側の窓の方に、断熱シートを張り付けていくのだ。熱さ5ミリくらい、フェルトのような生地でできていて、裏面はシールみたいになっている。これを窓ガラスに貼っていく。窓ガラス前面を覆わなくても、これがなかなかに効果のある代物で、商品のパッケージによると室温を6度上げる効果があるらしい。これで、暖房を入れるまでの期間を少し稼げる。

 

 どうしてそんなに寒いところに、と思われるかもしれないけれど、北国には北国なりの冬の備えがある。冬になると店頭に断熱シートが並ぶのだけれど、わが家で使っているタイプの断熱シートのほかにも、プチプチで窓全体を覆うものだとか、窓際において冷気をシャットアウトするタイプのものだとか、様々な商品がある。

 

 北海道に住んで二年目にして、ぶあついフェルトのテープで扉やサッシの隙間を埋めることを覚え、三年目にはカーテンの内側にビニールカーテンを吊るすと冷気が入ってこないことを学んだ。パジャマの下に綿の下履きを履くと、思わず声が出るほどあたたかいことも。北国はいったいどれほど冬に対抗する道具を隠し持っているのだろう?きっとまだまだ、秘蔵のグッズがたくさんあるに違いない。

 

 数年前から北欧風のファブリックに人気があるけれども、あれは長い期間雪に閉ざされる北欧の国々のひとたちが、それでも明るい気持ちで生活できるようにとつくってきた雑貨が元になっているらしい。寒いなかにも楽しみはある。暑さでぐてぐてになるしかない夏よりも、どうやって寒さを乗り切ろうと試行錯誤したり、どうしたら寒い冬を楽しく過ごせるだろうとあれこれ考える冬のほうが好きだ。今年はどうやって過ごしてやろう。

 

今週のお題「急に寒いやん」