モリノスノザジ

 エッセイを書いています

ほんの記録(1・2月)

 図書カードNEXTのホームページに、作家に3万円分の図書カードを渡して本を買ってもらうという企画がある(https://www.toshocard.com/booktopics/select/backnumber.html)。毎回、3万円分の図書カードを持たされた作家が本を選び、その本を選んだ理由を語る。これがおもしろくて、しばらく夢中になって読んでいた。この人はこういう本も読むんだ、とか、こんなシリーズがあるなって知らなかった、という驚きもさることながら、作家というのはなにを書かせても面白い文章を書くものだなあ…と感心してしまう。

 私はと言えば、ちかごろあまり本を読めていない。とおもったものだから、月5,000円分くらいは書籍代にあてることにしよう、と決めたのが年末のこと。文庫本ならともかく、たったの月5,000円で何冊読めると言うんだ?という感覚もあったのだが、そのささやかな目標を満たすためにとりあえず書店に行くようになり、たぶん月5,000円どころではない本を買っている。これが件の図書カード企画だとしたら、毎度度を越した自腹になるとさすがに企画の趣旨を損ねると、怒られているところだろう。でも、私の場合は財布の許すかぎり何冊買っても構わない。

 これは、そんな1月2月に買ったものたちの、ほんの記録。

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英語でよむ万葉集 (岩波新書)

英語でよむ万葉集 (岩波新書)

 

  万葉集のことをちょっと勉強したいなあとおもい、書店をぶらぶらしていて気になった本。解説書としては王道ではないかもしれないけれど手に取って、おもしろく読みすすめている。

 万葉集のことは国語の教科書程度の知識しかなかったけれど、時代や地域を超えた普遍的な感情を詠んでいたんだなあと感心した。

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レトリック認識 (講談社学術文庫)

レトリック認識 (講談社学術文庫)

  • 作者:佐藤 信夫
  • 発売日: 1992/09/04
  • メディア: 文庫
 

  前作『レトリック感覚』がとても勉強になったので、いつか読みたいとおもっていた。『レトリック感覚』よりも、ややこしい話が少なくてわかりやすい印象。

 ベッドサイドにおいて毎晩少しずつ読みすすめている。「この技法はいつか使ってみたいなあ」と何度もおもうけれど、寝たら忘れる。

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広い世界と2や8や7

広い世界と2や8や7

  • 作者:永井祐
  • 発売日: 2020/12/18
  • メディア: 単行本
 

  永井祐さんの第二歌集。この本の出版をまだ知らなかったころ、永井祐さんの短歌が雑誌に掲載されるたびに一首一首ノートに書き写しておいたのだけれど、それもちゃんと収録されていた。うれしいやらがっくりするやら。いや、うれしいです。

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はじめまして現代川柳

はじめまして現代川柳

  • 作者:小池正博
  • 発売日: 2020/10/29
  • メディア: 単行本
 

  短歌の先生が称賛していたので、買ってみた。川柳はまったく読んだことがない。俳句と川柳の違いすらわかっていないレベルなのだが、ときどき思い出してながめるとおもしろい。あまりはまると短歌がつくれなくなりそうだ。

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  これも人に勧められた本。ハヤカワ演劇文庫なるものの存在を知らなかったのだが、大型書店に行ったらちゃんと置いてあった。

 一読目は会話が面白いなとおもいながら読む。二度目、とりとめのないように見える会話のなかに、一度目には見えなかった登場人物のかすかな心の揺れ・動きのようなものを感じてふしぎだった。それにしても、4作品の戯曲が収録されて1,500円はほんとうにお得。

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迷子のカピバラ

迷子のカピバラ

 

  同じ著者の『この巻き尺ぜんぶ伸ばしてみようよと深夜の路上に連れてかれてく』を12月、書店で偶然手に取ってはじめて知った歌人。『この巻き尺~』を読んで好きだと確信して、第一歌集をさがしていた。

 家に届いた『迷子のカピバラ』をひらくときは相当にどきどきした。紙の外箱に本が収められていて、取り出した本はそっけなくてぶ厚い表紙・裏表紙に挟まれた和綴じ。大切にあつかわないと壊れてしまいそうだ。そういうどきどきもある。

 第二歌集にはダイオウグソクムシの連作があったのだけれど、第一歌集にはデグーの連作があった。あとがきにそのへんの事情に関することが書かれていて、ちょっと笑った。

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ポーカー・フェース (新潮文庫)

ポーカー・フェース (新潮文庫)

 

  新聞か何かで沢木耕太郎さんの文章を読んで、前から一冊買ってみようとおもっていたのだ。この本が偶然そうなのかもしれないが、ちょっと冗長でまとまりのない印象を受けて読みすすめられていない。

 ひとつの事柄から関連する体験や知識がつぎつぎと引き出されてくる部分は感心するけれど、一篇の文量が長いのか、だらだらした感じがする。飲み会で上司の武勇伝を聞かされてる感じ。最初は「すごいですね!」と感心しているけれど…すごいんだけど…。

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 このほかに図書館で借りて読んだ本もあるけれど、とりあえずこれだけ。

 こうして振り返ってみると、1・2月は興味のある分野に偏りすぎた感じもする。自分の知らないことや興味のないことほど積極的に知識を仕入れなければなあ、と反省。3月はもうちょっと意識して本を選んでいる。なぜこの本を選ぶのか?を言葉にすることって、意外と大事なのかもしれない。