モリノスノザジ

 エッセイを書いています

3年4カ月めの下書き

 クローゼットを開けると収納ケースの上に箱があって、箱を開けると、ずっと昔に買ったiPhone4の付属イヤホンに、余ったカーテンフック、何かの家具を組み立てるのに使った小さなレンチや目の入ったダルマがあるというように、そういうふうにこの下書きは3年4カ月の間ずっとここで眠り続けている。そして、下書きにあるのはこれだけだ。

 私は下書きを書かない。正確に言うと、記事を下書きとして保存するという習慣がない。記事はWordで書いたものをエディタに貼りつけて投稿しているし、書いたものはすべて投稿しているから、下書きに何かを保存しているということはない。しかし、この記事は3年4カ月前の2018年6月――つまり、このブログに私が最初の記事を投稿するよりも前からずっとここに眠っている。これは、私の、未来だったものだ。

 

 その下書きは、未来に書かれたものだった。ブログ開設から5年後、つまり2023年の私が書いたという設定で、ブログを立ち上げてからの5年間を振り返るという内容だった。このブログをどういうものにしたいか、どんな記事をどれくらい書いて、何人くらいの人に読んでもらいたいか。今読みかえしても、あのときの私のブログに対する思い入れが伝わってくる。多分私は、ブログを始めることで何かを変えられると思っていたのだと思う。

 

 「今読みかえしても」と書いたけれど、本当のところ、あまり読みかえすことはない。あまりにも力みすぎていて恥ずかしいし、あのときと今ではずいぶん考え方が変わったように思う。

 3年と4カ月の間ブログを書いたり書かなかったりしているうちに、いつからか、ブログに関わる数字にすっと興味がなくなった。気にしなくなった。

 自分の書いたものが誰かに見つけてもらえるのは、とてもうれしい。でも、たくさんの人に読まれるためだけの文章を書きつづけて、いつもアクセス数や読者数に追い詰められているのは不幸なことだ。自分がニヤニヤできる文章を書き続けることのほうが、ずっと満たされた気持ちになる。

 多分それは、このブログを通じて人と言葉を交わし、人のブログを読むことでもたらされた変化なのだと思う。私はこのままでいいと、信じられるようになった。ブログを書いていくなかでそういうやりとりが生まれること、それによって自分が変わっていくということを、あの頃の私は理解していなかったけれど。

 

 だからそろそろ私は、この下書きを消すべきなのかもしれない。消して、新しい下書きを書くのがいいのかも。次の3年4カ月、いや、次の10年間を振り返る新しい未来を。

 

 

*はてな特別お題キャンペーン【お題1:はてなブロガーに10の質問】「05 下書きに保存された記事は何記事? あるならどんなテーマの記事?」に答えました。ほかの9つは続きから。

 

01 ブログ名もしくはハンドルネームの由来は?

 ハンドルネームはもともと短歌の筆名として使っていたものです。
 よくも悪くも自分を裏表のない性格だと思っているので「すなお」に好きな漢字をあてて、苗字はネットの姓名判断でつけました。性別を女の子に設定すると、名前を固定したまま苗字をあれこれ変えて運勢を占えるサイトがあるんです。結婚を控えた女性向けの機能なんでしょうか。

02 はてなブログを始めたきっかけは?

 文章を書きたいと思ったから。はてなブログを選んだのは、他のブログサービスと比べて広告が控えめで品があり、外観のカスタマイズもしやすいからです。

03 自分で書いたお気に入りの1記事はある?あるならどんな記事?

 振り返ってみたけれど、なかなかひとつに選べない。サイドバーの「手前味噌」にお気に入り記事をまとめているので、よければ時間のあるときに読んでみてください。最近更新できてないですが。

04 ブログを書きたくなるのはどんなとき?

 本当はいつも書きたい。

06 自分の記事を読み返すことはある?

 記事を整理したりしているときに、つい読んでしまいます。過去の自分おもしろい。

07 好きなはてなブロガーは?

 ちゃんと文章を書いているブログが好きです。読者登録してるブログは基本好きですが、秘密の場所にしておきたいブログもあります。

 お名前を挙げるなら平熱通信の平川三十 (id:kuriguri) さん。何度も言ってますが、ファンなんです。

08 はてなブログに一言メッセージを伝えるなら?

 以前より頻繁に、いろいろなブログをTwitterなどで取り上げてくださったり、企画で盛り上げてくださっていて、最近すごくいいな!と思っています。いつもありがとうございます。

09 10年前は何してた?

 その前の10年間をつぎ込んだ楽器を辞めたところです。

10 この10年を一言でまとめると?

 充実に向かってゆく10年でした。