モリノスノザジ

 エッセイを書いています

2020-01-01から1年間の記事一覧

おいしいものが好きなひと

ちょっとでも気を抜けば、ろくでもない食事をしているから困る。ほとんど麺しかないパスタに半冷凍のミックスベジタブルを混ぜたり、いつつくったかわからない炒め物を何日も食べたりしている。腹が丈夫で助かる。それでもなんとか自分に「食べさせている」…

(笑)

食べ終わったアイスの棒にはアイスの味がしみ込んでいるような気がして、もう食べられる部分は残っていないのに、その木の棒をいつまでもかじっていたものだ。Doleのフルーツバーみたいなタイプは特に。意識を集中させてやれば実際木の味に混じってほのかに…

あなたが運命の人じゃなくても

何度寝返りをうっても眠れない夜に、唐突にその人のことを思い出した。久しく会っていない。…ああそうか、会っていない長さなんて関係ないんだ。私とその人とはなんの関係もなくて、ただ私が一方的に仲良くなりたいと思っていただけだったのだ。大学を卒業し…

SWITCH ME!!

「うちはうち、よそはよそ」と言えば、おもちゃをねだる子どもをなだめる親が言うセリフの代名詞だ。しかし私は、幸か不幸か(?)リアルにこのセリフをぶつけられたことはない。元来我慢強い子どもであったし、おもちゃよりも、家の外に無限に広がる田んぼ…

守護霊のスパルタ手洗い塾

「9階のトイレで、いつも手を洗わないひとがいるんです」。 女性社員から突然報告を受けた私は、とりあえず「はあ」とあいまいな返事をかえすことしかできなかった。発言の意図がわからない。女性社員は、私の「はあ」を発言の続きを促す合図と受け止めたら…

全国都道府県バックパネルの旅

地元には苺大福で有名な和菓子店があって、何度かお使いで苺大福を買いに行ったことがある。その店では、苺大福を買うと苺の絵が描かれた箱に苺大福を詰めてくれる。その苺の絵がずっと印象的だったのだろう。なんとなく私はその店を「苺大福の店」として認…

ここだよ モリノスノザジ

新型コロナウイルス感染拡大により外出自粛が呼びかけられるなか、世間では無人島への移住がちょっとしたブームになっているらしい。誰もいない無人島で暮らせばウイルスから身を守れるし、仮に自分が無症状の保菌者だったとしても誰かにうつす心配はない。…

はげとアイプチ

電車のなかでは、わりあい人がよくみえる。うかつなおねえさんの胸元も、あやういおじさんの頭頂部も、窓ガラスの闇に映ったスマートニュースも、吊革の下からはいろんなものがよく見える。 彼女はロングシートのなかほどに座って、マスクの前に構えたスマー…

「新型コロナウイルスの影響により…」

ここのところ、1日に何度もこのフレーズを聞く。何日かに一度は自分も口にする。はじめのころ、世界中がこんなことになるだなんてしていなかったあのころこそ心配半分興味半分で真剣にニュースを見てみたりもしたのだけれど、1日刻みですこしずつ増えてい…

「おばさん」はひとりください

みょうに胸がどきどきするのはなぜだろう。エレベータの操作盤で「10」の数字を押して。私を乗せた箱がしずかに上昇するそのなかで。その部屋のノブをまわして、重たい扉を閉める。明らかに、必要ないくらいのゆっくりさで。注意なんてしなくったって足音は…