モリノスノザジ

 エッセイを書いています

ブログという沈みゆく船に乗って

 他人といっしょになっておもしろがるって、すごくいいなあと思うことがある。学校に通っていたころはそんなタイミングがいくつもあったのかもしれない。でも、なんだか逃してしまっていた。昨日見たアニメのこととか、流行りのドラマのこと。このあいだ発売されたゲームのこと。来月の修学旅行のこと。それとも、ささやかなことすぎてもう忘れてしまったのか。

 なにかを誰かとおもしろがるなんて大人になってもできるはずなんだけど、大人になった私はやっぱり今も逃している。なぜかって、それもこれも、毎日テレビも見ずにこうやってブログを書いたりしているからかもしれない。でも、それってどうしてだろう?毎日書いているブログを、ブログのことを、誰かとおもしろがることは?

 

 ブログが「オワコン」と言われることがある。それについては、なんというか、もしそうなるとしても、それもしかたがないかな、とも思う。いま流行っているSNSは、どれもとってもインスタントだ。他人が投稿した短文が流れる川を見るようなTwitterに、画像やショートムービーの投稿に特化したInstagramにTic Toc。YouTube動画はただ見ているだけでいい。黙って口を開けていれば滝が流れてくるような状況にあって、長めの文章を能動的に読むだなんて面倒なことこのうえない。

 そうやってブログを読む人が減れば広告収入目当てのブロガーはやがてブログを捨てるのだろうし、そうなればいずれブログサービス自体がサービスを終えてしまう可能性もある。そうすると、辞めどきを見失って残されたブログ主たちは、ブログサービスとともに海に沈んでいくことになるのだ。

 

 残念だけど、仕方がない。時の流れってそういうものだ。20年前は中学生でも持っていた個人サイトも今となってはほぼ絶滅に近い。あのころ、型にはめたような一律のフォーマットが苦手でブログに手を出さなかった私も、手間暇かけてつくったホームページはとっくに捨てた。今流行ってるものだってこれからどうなるかわからないし、今は悲しくてもなくなってしまえば意外と平気だったりして。そんなものなのだ。

 

 だけど、どうせなら沈むまでの間をたのしく過ごせたらいいなあと思っていて、たとえば誰かとブログをおもしろがることだ。ブログ(とくにはてなブログ)には、他人の書いたブログに対して反応するための「しかけ」がいくつもある。☆をつけるとか、ブックマークするとか、コメントするとか、同じお題で記事を書くとか、そういうやつだ。けれども、それだって「おもしろがる」にはまだ遠い。☆をつけるのもブックマークをつけるのも一方的な交流であって、双方向のやりとりにはなっていない。

 

 ですね。noteのSさん(id:odanoura)が配信されているラジオ(「略して好きブロ!」企画)は、その点でとてもおもしろい試みだと思う。毎回一人ゲストを迎えて、ゲストが気に入っているブログ記事について話すというもの。第1回を聞いたのはなんとなくだけど、おもしろくて最新回まで一気に聞いてしまった。Sさん含め、普段ブログを読んで知っているはずの人も、声や話を聞いてもっと好きになる。そして、なによりもSさんとゲストが互いのブログを、そしてブログを書くことをいっしょになっておもしろがっているのがとてもいい。すごくいい。私はそういうことがしたかったのだ。

 

 実はSさんは6月のはじめに二度も(たしか)私をラジオに誘ってくださっていて、したがって、6月は逡巡の一か月だった。……出たい!すごく出たい…というか、Sさんとブログの話をしたいのだ。モリノスノザジのことはさておき、私だってSさんと好きなブログの話がしたい。

 そういうわけで、でも出演するにしても入力端子がないんだったよなんていそいそとマイクを購入したり、タイトルコールの練習をしておいたほうがいいだろうかなんてあれこれ悩んだりもしたのだけれど、いざ、となると二の足を踏む。なんてったって、これまでの出演者の皆様、みんなお話がうまいのだ。どうしてブログを書いてるんだ?ブログっていうのは口でうまくしゃべれない(私のような)人間に与えられた救済装置じゃなかったのか?というか、私が出てるラジオ、誰か聞きたい人、いる…?

 

 というわけで今のところSさんのラジオ出演は保留である(すみません…)。けれど、文字書きブログ主は文字書きブログ主として、ブログという沈みゆく船のうえでも盛大にたのしくやっていきたいなという気持ちもあり、たとえばここで私が好きなブログの好きな記事について書かせていただいたりだとか。ラジオというかたちで音声を配信するんじゃなくても、他のブログ主さんと話をする機会があったりしても楽しそうだ。そして、その内容を記事にしたり。そんなことができたらいいなと思っている。昨日見たドラマについて友達と話すみたいに、昨日読んだブログのことを誰かと話したいんだ。

 

P.S)というわけで、Sさん、すみません。その気になったらご連絡します!