モリノスノザジ

 エッセイを書いています

買い物占い2022

 にがてにがて、お金のことを考えるのは苦手。節約や運用のことを考えるとからだがムズムズしてじっとしていられなくなる。まだ掃除をしたほうがマシだ。それでも人並みに将来に対する不安はあるものだから、結局のところ、上手にお金が使えない人間が生まれる。多分私はまだ、お金の上手な使い方をよくわかっていない。

 

 お金というものはつまるところ、交換券なのだと思う。お金に価値があるのはそれと引き換えに何かを手に入れられるからであって、お金それ自体に価値はない。だから、お金を貯められる人こそが上手にお金を使っているというわけではないのだろう。お金を上手に使える人というのは、お金と引き換えに何を手に入れるべきかを知っている人なのだと思う。

 

 そういうわけで、なにかを買って「買ってよかった」と感じることができたときには、なにかとてもすばらしいことがそこで起こっている。私はお金を払って、その品物を手に入れる。それは、お金というこの紙っ切れにはできないような価値をもたらしてくれて、私は幸せになる。公園を散歩しながら好きな音楽を聴いたり、あたたかいパジャマで眠ったり、DVDを見て笑ったり、お酒を飲んでいい気持ちになったり。いい買い物って、なんて幸せなんだろう。

 

 生きていくにはお金が必要で(それはときどき私をひどく悲しい気持ちにさせる)、裏を返せば、お金が生活をつくっている。今週のお題「買ってよかった2021」には、人と物との幸せな出会いにあふれていて、その出会いがいったいどんな2022年をつくっていくのだろうと、想像してみる。

 自転車を買ったこの人は?コンタクトレンズをつくったこの人は?きれいなランプを買ったこの人は、このランプをつけてどんな夜を過ごすだろう。髭剃り、今朝も使ったかな?新しいカメラのレンズを買ったこの人は、今年どんな写真を撮るのだろう?いくつもの「買ってよかった」はすべて過去の出来事でありながら、その人にとっての2022年を少しだけ暗示しているようにも思える。お金は生活をつくっている。

 

 では私自身が「買ってよかった」物は何かと言うと、毛の短いラグだ。前に使っていたラグは無理やり風呂に入れられた後の犬みたいに毛がへたへたで、長い毛にゴミが絡まるものだから、風呂上りのわりにはちょっと不衛生でもあった。もう長らく使っていることだし、と新しいラグを買う。もうシャギーラグはやめにして、毛のループしたカーペットタイプ。手入れしたての柴犬の背中みたいで気持ちがいい。

 年末年始は、この柴犬の背中の上に寝転んで毛布にくるまり、ストーブにあたりながら本を読んでいた。なんてすばらしいんだろう。でもこの調子だと、私の2022年は床に転がっているだけで終わりそうだ。ときどき居眠りをして。

 

 ちなみに、「買わなければよかった2022」というのもある。これは人と物との最悪の出会い方だ。お金と交換して手に入れたにも関わらず、大して気に入らなかった、使わなかった、すぐ壊れた、おいしくなかった、腐らせた、似たようなものを既に持っていた、サイズが違った、似合わなかった、使う機会がなかった、などなどである。

 

 「買わなければよかった2021」の一位は、座ったまま使えるエアロバイク。これならTVを見たりゲームをしながら運動ができる!ゲームをしながら、運動をしていないことに対する罪悪感を解消することができる!と喜び勇んで購入したモノの、2週間で置きものになった。今はデスクの下で埃をかぶっている。そのうえ、それなりに図体が大きくてデスクから少しだけはみだしているものだから、時々足をひっかけて転びそうになる。

 なんだか、ますます床に転がっているだけの2022年になりそうである。

 

また読みにきてくれるとうれしいです! 

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今週のお題「買ってよかった2021」