モリノスノザジ

 エッセイを書いています

男は眼鏡でメイクせよ

 なんとなくそういう気分になったのであたらしい眼鏡を買ってみた。シルバーのメタル素材で、テンプルは外国のお菓子みたいな色のグレー。銀の眼鏡なんておばあちゃんかよ、とおもいながらもかけてみたら思いのほかしっくりきて、翌日あらためてかけてみたらこれがもう本当によくていい買い物をした気分。

 そもそも、パーソナルカラーを考慮すれば私はシルバーが似合うはずなのだ。パーソナルカラーとは簡単に言うと「その人に似あう色」のことで、髪や肌、瞳の色などで判断される。似合う色のグループごとに春・夏・秋・冬の4グループで分ける方法だとか、さらに細かく分ける方法だとかいろいろあるようだけれど、一番大きな分類は「ブルーベース」と「イエローベース」と呼ばれている。詳しいことはネットで調べるなりプロにみてもらうのがいいと思うけれど、ごくごく簡単にいえばピンクっぽい肌と黄色っぽい肌との違いと言えるかもしれない。それぞれに似合う色のグループは違っていて、似合わない色を着ると顔色が悪く見えたりしてしまう。

 パーソナルカラーを意識するようになってはじめて、色が持つ力、色を味方につけるたのもしさや反対の色が私を殺しにくる、その圧倒的な力を意識するようになった。真っ黒な服はぜんぶ捨てて、うすいグレーやラベンダー色を取り入れるようにすると、見違えるように血色がよくなった。そして眼鏡も今回、テンプルがゴールドだったのを買い替えてみた。こころなしか顔全体のくすみがとれて、目の色もあかるく見える気がする。というか、パーソナルカラーのことを知りながらなぜ似合わない色の眼鏡をかけていたのだろう?

 昨年9月、男性向け化粧品の総合ブランド「FIVEISM×THREE(ファイブイズム・バイ・スリー)」が誕生した。このブランドのあたらしいところは、化粧水や洗顔料といった基礎化粧品だけではなく、ファンデーションやアイシャドウ、ネイル、リップといった本格的な「コスメ」を提案している点である。男性がネイル?リップ?とおもうかもしれないが、公式HPのトップページに表示される彼らはもうめちゃくちゃにかっこいい。そして、彼らは一様にメイクを施していながら、誰一人として同じではない。赤いアイシャドウに緑のアイブロウ、グレーのネイルは彼ら自身を覆い隠すのではなくて、彼らがもともと持っている魅力をより高めているように見える。

 このブランドのコンセプト(公式HPで一度読んでみてほしい、すばらしいので)にこめられた思いとも重なるけれど、私は「外見」にジェンダーは関係なく、むしろ個性の問題だと考えている。女装はゲイと結び付けて考えられる場面が多いけれど、性的指向とファッションによる表現はまったく別のものだ。男性も、というか性別なんて関係なく、それぞれが自分に似合うものを着ればいいし、ここちいいなら肌の手入れもすればいいし、メイクだってすればいい。大事なのは自分に合っているか?ということで、それは「個性」という言葉をうがった目でみるときに想像するようなひねくれたものじゃなく、私のあたらしい眼鏡が私の顔にすっとなじむみたいな、そういう自然な個性、「個」性だ。

 駅の階段をのぼる人たちをながめていると、冬はあんまりにも黒い光景なので驚いてしまう。男性は黒いコートばかり着ていないで、もっといろいろな色のコートを着ればいい。パーソナルカラーの視点でみれば、ベーシックな黒こそ着こなしが難しい色だという。どうして似合わない色ばかり身につけて、そう暗い顔をしてるんだ?もっともっと、あなたに似合う色はあるはずだ。似合うのを着ればいいし、似合う色を身につけてもっと素敵になればいいよ。といっても、いますぐブルーのアイシャドウをつけて街に出よなんてむちゃなことを言うつもりはない。そうだな、まずは眼鏡を変えてみたらどうだろう?眼鏡って顔の中心にあって、意外とインパクト大きいし、そのへんの安い眼鏡屋さんでも意外といろんな色がそろってるもんだよ。

 そう。男は眼鏡でメイクせよ。まずはね。

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もちろん、ブルーのアイシャドウも素敵ですよ!

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