モリノスノザジ

 エッセイを書いています

きょうも仕事をがんばります

 いわゆる管理部門といわれる部署に所属しているので、社内のいろいろな人からちょこちょこ頼まれごとをする。メールでのやりとりが主なので、会ったこともなければ声も聞いたことがない。それでも毎日のようにやりとりをしていると、メールの文面から「あ、私のことを信頼してくれてるな」と感じるときがある。

 すこし前、この職場にくるまでは、だれかに仕事を頼むためには信頼関係が必要だと考えていた。だから、たまに誰かに仕事を依頼するときには、しかもそれが普段あまり関わりのない人だったりすると、ひどく気おくれがした。日ごろからコミュニケーションをとっているわけでもないのに、仕事で必要なときだけ声をかけるなんて自己中心的なやりかただと思ったからだ。自分は他人のことを自分にとって都合のいい道具としてしかみていないのではないかと感じた。

 けれど、自分が仕事を頼まれる側になってみると、そんなことは少しも気にする必要がなかったとおもう。だいいち、自分がすべきことを頼まれて「都合のいいときだけ頼りやがって」なんて思ったことは一度もない。あらかじめ信頼関係がなかったとしても、頼まれた仕事をひとつひとつこなしていくことで信頼は育てていける。ある意味それが大人の社会というもので、自分の心配はいったいなんだったのかなあという感じもする。けれど、たとえば飲み会で一人一人にお酌をしてまわったり、会社のボーリング大会やマラソン大会にも欠かさず出席してはしゃいだりとか、そういったことが苦手だったとしても、なすべきことをしていれば誰かがそのはたらきを認めてくれているというのであれば、それはなんだか、無味乾燥な仕事生活のなかにちいさく光る明かりのようだな、と思う。そういうわけで、明日からもまあほどほどに、仕事をがんばっています。