モリノスノザジ

 エッセイを書いています

暑い夏はお好き?

 ここのところ各地で暑い日が続いておりますが、みなさま暑い夏はお好きでしょうか。私の住むまちも今日はめずらしく最高気温が35度を超え、暑い夏好きの私にとってはすばらしい一日となりました。

 子どもの頃、夏は四季のなかで最も嫌いな季節だった。「暑苦しい」という言葉が示しているように、夏は「暑」くて「苦」しいもので、カエルは鳴くし蚊は刺すし、いいことなんてひとつもない。当然「汗をかくのが気持ちいい」なんて感覚も全く理解できなかったのだけれど、どういうわけか、その汗をかくことの気持ちよさに目覚めたばかりに夏が一番好きな季節になってしまった。

 夏に目覚めたのは三年前の夏。8月の暑い日に、出雲大社に詣でたときのことだった。出雲市駅に宿をとり、レンタサイクルで出雲大社まで走ったのだけれど、それが地獄のようだった。

 出雲市駅から出雲大社までの道のりは出雲路自転車道として整備されており、道に従って走っていけば迷わず目的地に到着できるようになっているのだけれど、緑豊かな田園の真中を走るサイクリングロード、飲み物が買える店もなければ自販機もなかなか見当たらない。日差しを避けて休憩できるような場所もほとんどなくて、8月の炎天下に走るのはかなりきつかった(今は改善されているのかもしれない)。

 日ごろの運動不足もたたって、出雲大社に詣でてホテルに帰りついたときにはくたくた汗ビショのボロ雑巾のようになったのだけれど、どういうわけだかこのボロ雑巾が快感で、それから汗をかかない夏では物足りなくなってしまった。

 暑くて夜中に汗をかいた翌朝は、朝早く起きてシーツを洗濯する。シーツを干してできた日陰で横になって1日じゅう本を読んだりして過ごし、夜になったらカラッと乾いたシーツで眠るのがすばらしい一日の過ごし方だ。

 一度好きになると、夏はハッキリくっきりしているのがいい。秋や春とは違って始まりと終わりがとても分かりやすいのが好みだ。みんな夏は暑いから嫌いだというけれど、ほかの季節と違って夏は特別な季節であることは間違いない。「ぼくのなつやすみ」があって「ぼくのふゆやすみ」や「ぼくのはるやすみ」がないこともその証拠だ。

 とはいえ、暑さで多くの人が亡くなっているのも事実ですので、みなさんこまめな水分補給をお忘れなく。そして、残りの夏を存分に楽しみませんか?

[追記]

 地獄などと書きましたが、いままで訪れたあらゆる場所のなかで楽しかった記憶がもっとも強く残っているのも出雲のサイクリングロードです。みずみずしい水田とどこまでも続く青い空がひろがって、その境目を自転車で走っていくのがたまらなく気持ちよかった。途中で通る街中はどこか懐かしい感じも。また、出雲大社へ続く一畑電車には自転車を載せることができます。自転車と一緒に電車に揺られるのは不思議な感覚…というだけでなく、疲れたら帰り道は電車で帰る選択肢があるというのはとても助かります。出雲…また行きたい。