モリノスノザジ

 エッセイを書いています

私はいつ準備ができるのか(2)

 「準備ができてない」っていうのはたしかに不安なことだよね。

 高校を卒業するまで私が住んでいた地域は、30年以内に50パーセントの確立で大地震が発生すると言われてきた。幼かいころの私は、いつか地震が起きることやそれによって家族や周りの人が傷つくことをとても恐れていた。眠っている間に地震が起きるんじゃないかと不安で、真夏でも布団を頭までかぶらないと眠れなかった。

 いま思えば、この不安は「準備ができていない」ことの不安だったんだと思う。靴を枕元に置いておくなり落ちそうな物は床に下ろしておくなり、何か準備をしてさえいれば、私はぐっすり眠れていたはずだ。じゃあどうして、私はそれができていなかったんだろう?

 たとえば、私は幼かったので、靴を枕元に置くというような方法を知らなかったのかもしれない。避難用の靴を買うだけのお金がなかったのかもしれない。もしかしたら、怖い怖いって言いながら本当に地震が起きるなんて信じていなかったのかも。靴を置くことで「地震怖いの?」ってきょうだいに笑われるのが嫌だったのかもしれないな。想像しづらいけど、ほんとうは地震が起きたら助からないような状況で眠ることにスリルを感じていたのかもしれない。

 そうすると、私がいま「準備ができていない」のも例えばこんな理由なのかもしれない。

① 方法を知らなかった
② 本気じゃなかった
③ 真面目に取り組むのが恥ずかしかった
④ 方法は知っていたものの、準備するお金がなかった
⑤ 方法は知っていたものの、準備する時間がなかった
⑥ 不安に思いながらも、一方で不安な気持ちを楽しんでいた
⑦ 方法は知っていたものの、その方法が正しいかわからなかった
⑧ どれだけ準備をしたら十分なのかわからなかった

 ②や③が一番大きな理由なのだとしたら、もうそれ、やらなくていいんじゃない?と思う。なので、②と③は今回は無視することにする。一応ささやかなお金とそれなりの時間はあるものとして④と⑤もパス(お金がないのはどうにもならないしね)。⑥も⑥で、私がもし不安な状態を楽しんでいるのだとしたら、それを解消する必要がない。これもいったん無視することにする。

 そうすると、私が〈やりたいこと〉に取り組むためには、ひとまず①・⑦・⑧の問題について考えてみるのがいいんじゃないだろうか?やりかたを知らない場合はどうしたらいい(①)?この方法は合ってるの(⑦)?どれだけやっておけば大丈夫(⑧)?
 どうだろう?