モリノスノザジ

 エッセイを書いています

エナジーギンガギンガ

 やってしまった。わかっていたはずなのに。甘くみてしまった。もう、取り返しがつかない。どうしようもない。…もう、今夜は眠れない。

 

 昼の12時ころのことだった。リミットを見極めるのに失敗したのだ。私はカフェインに人一倍敏感で、午後をまわってからコーヒーを飲むと決まって夜眠れなくなる。

 

 モスバーガーの注文カウンターの前に立ったのは、12時を少し過ぎたころだった。午後と言えば午後。でも、午前をちょっと超えたくらいだ。13時からを午後ととらえれば、12時台はまだ午前と言えなくもない。今日は暑いから水分をたくさん摂取するだろうし、そうすれば多少遅めに摂ったカフェインでも体外に排出されるかもしれない。それに、今夜眠れなかったとしても明日は休日だ。多少眠れなかったとしてもたいしたことはない。
 そうした甘い見通しが誤った判断を生んだのだ。私は一向に鈍らない瞼をギンギンに開いて、布団の上で苦しむことになった。

 

 これが普段の身体なら、いくらでも時間の使いようはある。私にはやりたいことがたくさんあるのだ。買っただけでストーブの上に積んである本、どうぶつの森でお金集め、書き途中のブログ記事…。でも、今は眠れないからといってそうしたことに取り組む気にならない。身体が疲れているのだ。心と身体の歩みがちぐはぐなことほど苦しいことはない。
 やる気はあるのに、ピアノに向かうとくしゃみが止まらなくなるとか、大好きなケーキでお腹を壊すとか。今の私はまさにそんな状態で、眠りたいのに身体が眠らない。どうせ眠れないならなにかやりたいのに、身体が動かない。ジレンマである。

 

 そういう身体の持ち主だから、普段家で淹れるコーヒーは薄めにつくる。必要な豆量の2/3。これが私にとっての限界量である。
 家でコーヒーを飲む時間がなくて、どうしてもコーヒーを飲みたいときには職場で缶コーヒーを買う。朝9時頃。その時間に飲んでさすがに夜まで残ることはないけれど、缶コーヒー一本で明らかに自分が興奮していることがわかる。指先まで痺れるようにシャキッとして、鼻息も荒く、なにより普段と比べて並外れて集中できる。いいことばかりなようにもみえるけれど、その効き方が私には怖い。

 

  カフェインと言えば、コーヒーもそうだがエナジードリンクである。飲んだことはない。飲んだことはないけど、きっとすごく効くのではないだろうか。なんてったって《ENERGY》である。《翼をさずける》である。《MONSTER》である。「エナジー」に添えられた「ドリンク」もまた、ケミカルっぽいヤバさを醸し出している。

 こんなものを飲んでしまった日には、身体中の血液がぐつぐつ沸いて、鼻から熱い息が止まらなくなって、異常にハイになって無駄に元気よく階段を駆けまわったり、椅子に座っていてもムズムズしてエビぞりに跳びはねて暴れだすとか、ギンギンを通り越して自我を忘れてしまうのではないか。そう、まさしくモンスターにでもなるみたいに。

 

 でも調べてみたら、エナジードリンクと言えどもほかのカフェイン含有飲料と比べて著しくカフェインが含まれているわけではないらしい。コーヒーと同じか、それよりも少ないくらい。もっとも、エナジードリンクはコーヒーや緑茶と比べてゴクゴク飲めるので、急性カフェイン中毒に注意が必要だということには変わりないみたいだ。
 それでもエナジードリンクは、これからも、私に翼をさずけ、ゾーン状態にし、怪物にする鍵であり続ける。実際にエナジードリンクを飲んでしまうまでは、少なくとも。

 

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