モリノスノザジ

 エッセイを書いています

お題対策室(りっすんブログコンテスト)

 今月16日からエントリーがはじまった「りっすんブログコンテスト」。初日からたくさんのはてなブロガーが記事を寄せていて、読んでも読んでも読み切れないほどだ。けっして賞金20万円につられたわけではないけれど、コンテストなんて言われるとわくわくする。子どものころ、ちっちゃな街のお祭りの、さえないカラオケ大会に、それでもわくわくしていたみたいに。『コンテスト』ということばには、なにか人をひきつけるものがある。たとえ自分が大賞を取れるとは思っていなくても、賞品がどんなものであろうとも。

  コンテストにひかれていながらも、私はまだ書きあぐねている。エントリーはしたい。けれど、お題がむずかしすぎるのだ。

 

 今回のお題は『「迷い」と「決断」』。誰だって迷うし、誰だって大なり小なりなんらかの決断をしながら生きている。その意味においては、このお題は誰にでも書けるトピックである。

 しかし、誰にでも書けるトピックをおもしろく書くのはむずかしい。誰もが迷い、決断しているなかでどう差別化するか。方法はふたつある。ひとつは特殊な「迷いと決断」を語ること。他人にはない特殊な経験をしていたり、変わった職業についている人はこの点で強い。多くの人が経験していないようなこと、それにまつわるエピソードはそれだけで人の興味をそそるからだ。特別な経験がなければ、切り取り方や語り方を工夫する。就職や恋愛、進学など人生の岐路においては「ふつうの人」であっても悩み、決断する。だからこうした出来事を題材に選ぶ人は多いだろうけれど、その場合は他人とは違ったアプローチの方法を考える必要があると思う。

 

 ここまで書いてしみじみと感じるのは、どうやって書くにもまずは「読まなきゃ」ということだ。自分が経験してきた出来事のなかで、はたしてどれがベタな経験で、どれが稀有な経験なのか。恋愛について書きたいのであれば、他の人はそれをどう書いているのか。恋愛のどんな場面に焦点を当てて、そこでどういった感情の動きがあったと考えているのか。個性的であろうといくら願ったとしても、ベタベタのベタをまっすぐに狙うことができなければ、そこから外すこともできない。

 

 そういうわけで、りっすんブログコンテストのエントリーをちょこちょこ読みながら感じたことがいくつかある。


① 書きすぎる

 『「迷い」と「決断」』というお題は罠だ。誰だって、迷った末に自らの意思を持って決断した出来事に関してはそれなりの思い入れを持っている。そして、その出来事がいかに自分にとって重要な出来事であったのかをきちんと説明するにはそれなりのことばを費やす必要がある。思いを文章に乗せるうち、文章はどんどん長く、焦点が絞り切れなくなってくる。なかには他人の人生に興味津々な人もいるのかもしれないけれど、私のような冷たい人間はあんまりくどくどと書かれると読み続けるのがむずかしくなる。

 エントリーのなかにはこんなものもある。「…それでは私の人生における迷いと決断について書いていきたいと思います。まずは中学生編。…続いて高校生編」って、いやいや。ひとつの記事でどれだけ振り返るねん、っていう。長いスパンを平たんに平たんに語るよりも、たった一つの小さな決断とそのときの感情にギュッと集中して書いた方がおもしろい記事になるんではないかな、と思うんだけれども。

 

② 特化型ブロガーは強い

 上記の事情から、一言で言い表せるような「属性/キャラクター」を持っているブロガーは強い。「三児の母」でも「副業トレーダー」でもいい。たった一言それさえあれば、こまごまと自分のことを説明しなくてもある程度のバックボーンを描くことができる。

 雑記ブログやエッセイブログは一見こうしたお題に強いように見えて実は弱い場合もある。書き手自身に関する情報が希薄で、「私」が透明な場合だ。このような人が今回のお題のように個人的な問題が強くかかわってくるテーマについて書こうとすると、多くのことばを費やさなければならない。

 

③ だいたいの人は「決断」したことに対して満足している

 しない後悔よりもした後悔、とは言うけれども、投稿されたエントリーを読んでいると「した後悔」について書かれた記事があまりにも少ないことに気がつく。決断した結果失敗した、なんてエピソードよりは、決断してよかった!ハッピー!な記事のほうが後味さっぱりなのでそりゃそうだといえばそりゃそうだし、お題の趣旨からしてそういうエピソードを求めているのだとは思うけれど、不思議。『迷った末に決断→よくなった』という構図がベタなのであれば、それをアレンジする方法があるかもしれない。

 

④ とにかくタイトル

 見た感じ半分くらいの人がタイトルを「迷いと決断」に設定しているような気がする。それでもいいといえばいいんだけど。

 

⑤ いい感じで真似したい記事も発見

 この目のつけ方は面白いなとか、最後はこんな感じで締めるのか、などなど。具体的にどんなのかは秘密。

 

 ということで、なかなかに頭をひねらせるお題に出会えたことを感謝しつつ、きれいなハードルの乗り方を考えている。