モリノスノザジ

 エッセイを書いています

狂った時計

 家の近所に、毎時「0分」になると童謡を流す時計がある。朝8時から18時まで一時間おき、「0分」になるとスピーカーから音楽が流れるのだ。しかし、その時計がどうも狂っている気がする。NHKのニュースを見ていると、お天気キャスターが「お住まいの地域の警報・注意報」について話しているあたりで音楽が鳴り始める。時報が鳴るのでああもうそんな時間かと思いながら二度寝を始めると、夢もみないうちに携帯のアラームで起こされる。時計が2・3分早いのだ。
 ところが、そうこうしているうちにいつの間にか時計が修理されたみたいだ。今では朝ドラの開始とともに『スコットランドの釣り鐘草』が鳴る。正確なはずなのに、それはそれで何か物足りない。ほかの時計たちからズレたその時計が、実のところ少しだけ気に入っていたのかもしれない。
 正確な時計は、正しい時間に正しく時報を流し続けている。