モリノスノザジ

 エッセイを書いています

スーパードライにつめたくて

 診断を免れるためならドーピングだってした。日ごろから用心して対策をしてきたし、今度こそは間違いなくわからないと思った。けれど日々の生活で積み重なった乾燥は私の角膜に深い傷をきざんでいて、医師の鋭い目はごまかせないのであった。


 眼科に行くたび、ドライアイと診断される。自分ではこまめに目薬をさしてるつもりだし、なんなら眼科にはいる前にもたっぷり目をうるおしているというのに、どういうわけだかドライアイと診断されてしまうのだ。とうとう昨年は、涙腺に薬で蓋をして目のなかの涙が流れでないようにする手術を受けるまでになった。自覚していなくてそうなのだから、自覚があるときはきっと砂漠の砂みたいにカラカラなんだろう。私の目は。

 気が付けば肌も乾いている。数年前までは母が冬になるとハンドクリームを塗る理由がわからなかったけれど、今は私もハンドクリームなしでは三日と暮らせない。歳をかさねるにつれて手は指先からひび割れ、フェイスラインから侵攻してきた顔の乾燥はいまや中心まで迫ってきている。年齢的にももう「フレッシュな新人」と呼ばれるような年ごろでもなくなってきた私であって、こうやって人はこころも身体も乾いていくのだなあ、なんてしみじみと思う。

 人は放っておけば乾いていく。新生児では体重の約75パーセントを占めていた水分が、歳をとるにつれてだんだん少なくなり、老人になると約50~55パーセントまで落ち込んでしまうという。水分量が減る理由はいくつかあって、その一つは体内の脂肪分の増加らしい。身体のなかの水分は身体すべてに均等にいきわたっているわけではなく、部位によってその水分量が異なる。脂肪分は含んでいる水分の量がとても少ないので、年齢を重ねて脂肪が増えるにつれ、女性の場合は大人になって身体の脂肪分が増加するにつれて身体全体の水分量が減っていくというわけだ。逆に水分量が多いのは筋肉で、その約70~85パーセントが水だという。だから筋肉の少ない老人は乾燥しているし、スポーツマンは肌がつるつるなのだ。

 筋肉の問題は私にとってある程度、そこそこ、明日の夕飯よりは重要なくらい気になっている話題だ。乾燥の問題もそうだけれど、冬になると冷えもやってくる。冷え性として手足が冷えていることはもちろん、尻が驚くほど冷たくてトイレに入るたびにびっくりする。そこが冷えてたらそのほかの部分も温まらないわけだよなあ…五体の要だものなあ…となんとなく納得しながら、毛糸のパンツを履こうがヒートテックに変えようが一向によくなる気配もないので、筋肉をつけてしまうのが一番いい解決策なんじゃないかと考えている。筋肉をつければ身体の水分量が増して乾燥解消&身体ポカポカ、ついでにストレス解消にもつながるかもしれないと思うのだけれど、肝心の運動が続かない。ジムは今年の春から行かなくなってしまった。雪がなくなって外でジョギングができるようになり、ジムに通う必要がなくなったからなのだけれど、どういうことかそのあとジョギングをした覚えはない。これならできるかもと購入した縄跳びも、三日坊主どころか二日でやめてしまう始末だ。あーあ、どうにかして簡単に筋肉をつけられる方法、ないのだろうか。